車検前整備内容<2001年6月2日>

1998年の6月に993カレラを購入し、初の車検を迎えることになった。そこでお世話になっているポルシェ・ショップに車検をお願いしました。今回、車検前整備の立会いと取材をさせていただきましたので紹介します。近年はユーザー車検が盛んであり、それは歓迎すべきかどうかの議論はここでは避けたい。個人的な見解としては精密機械である911については熟練されたプロのメカニックさんにお任せしてベストコンディションを保ちたいと考えてます。プロの磨かれた腕で整備される911には日本刀のような切れ味がいつまでも保たれると確信してます。

今回点検修理した主な内容(作業時間は7時間 点検順位不同)

走行距離65709kmにて点検(納車時の距離は35900kmなので3年で29800km走行したことになる。)

点検項目 結果と処置
ホイールベアリングのガタ点検 問題なし
タイヤの磨耗点検 タイヤの偏磨耗とトレッドの深さを確認したが問題はなかった。このタイヤはBSS0-2/PPで2000年7月に交換して10400km走行している。前回にサスのリフレッシュと4輪アライメントに交換したので偏磨耗もなく綺麗だ。センター溝の深さはRタイヤが4.0mmで5分山(新品8.0mm)、Fタイヤがまだ7分山(6.0mm)。Rタイヤはまだ使用できるが思い切って2本交換することにした。(画像はRタイヤ)BSのS0-2/PPはすでにS0-3/PPに切り替わっており今回はメーカー在庫品をかろうじて車検の事前に入手できた。
ステアリングタイロッドのガタ点検 タイロッドのガタは問題なし。フロントのステアリングタイロッドにガタがあるとアライメントも狂い問題である。赤矢印の内部にはゴムブッシュが装着されておりこれが劣化するとガタが出る。ステアリングのすえ切りを多用すると劣化が早いらしい。ガタがあればタイロッドごとアッセンブリー交換だ。
ステアリング ダストブーツ点検 ラック&ピニオンのダストブーツ周辺の点検は特に問題なかった。ブーツが破れていれば修理が必要となる。メタル部分が茶色く変色したように見えるのはアンダーコート剤が塗布されているからだ。
ブレーキマスターシリンダー点検 ブレーキのマスターシリンダーも特に問題なし。ブレーキラインの油圧の元となる重要なパーツだけに見逃してはならない。これもメタル部分が茶色く変色したように見えるのはアンダーコート剤が塗布されているからだ。
ブレーキホースの点検 前後輪4箇所のブレーキホースをチェックしたが問題なかった。表面にひび割れがある場合は交換となる。ブレーキホースは重要保安部品であり、ホースにオイル滲みがあれば黒く汚れるので発見しやすい。ステンレスメッシュ製のものはかえって判断しにくいそうだ。
ドライブシャフトブーツの点検 ドライブシャフトブーツが破れていないか点検したが問題なかった。ドライブシャフトブーツも消耗品の一つであり表面に小さな穴が発見された場合は注意である。
エンジン本体のオイル漏れ点検 目視検査したが問題はなし。
エンジンオイル&エレメント交換 エンジンオイルとオイルエレメント(2個)は前回交換してから3400km走行でで交換した。今回は初めてMOTULの300V Competition(15W50ヨーロッパ並行品)を9L入れた。MOTULは高価だが絶大なる人気を誇るオイルだけに回転フィ‐ルがどう変わるか楽しみである。
スパークプラグの点検 スパークプラグは全数(12本)外して見るのはたいへんである為、外し易い箇所のプラグの焼けと消耗の度合いをチェックした。前回交換してから20300km走行でありまだ使えそうなので交換しなかった。30000kmぐらいで再度チェックをすることにした。画像は少しコントラストがついて判りにくいが申しわけなし。
オイルクーラー周辺のオイル漏れ点検 右フロントフェンダー内にあるオイルクーラーのオイル漏れをチェックした。漏れや滲みはまったくなく良好である。赤矢印オイルライン部分からのオイル漏れが発生しやすいので注意である。
オイルクーラーのレジスター交換
未対策品 対策品
未対策は粉々 レジスター取付け位置
オイルクーラー周辺のオイル漏れもなくオイルクーラーは正常に動作しているのだが、サーモ機能用レジスターが水分に弱い未対策品であるため対策品に交換した。レジスターが壊れるとオイルクーラーが正常に動作せずオイル温度が上昇してしまい長く放置すると結果的にはエンジンのパッキン類にダメージを与えて怒号のオイル漏れになる。993系のウィークポイントだ。この未対策レジスターは右フェンダー内のノーズ先端の方に配置されており雨や洗車によって水が掛かり易いのである。おまけに内部がボロボロに劣化するので叩くだけで砕けてしまった。(左下)もう壊れる寸前だったようである。対策品は材質が換えてあり水分にも強そうだ。対策レジスターはノーズ先端に取りつけるのは止めてできるだけ手前にドリルで取りつけ孔を加工して配置した。(右下)これで水をかぶることもないであろう。993の場合はこのレジスターはかなりの確立で壊れており、今までMY993が壊れなかったのは雨の日に乗らない、バケツ洗車しかしないことが影響してるようだ。
クラクションホーンの点検
 
今回唯一の修理はこのホーンである。以前よりクラクションのホーンがマヌケな音がしていたので2連のうち1連が死んでるかもしれないと思いつつ放置していた。オイルクーラー点検と同じ箇所にあるのでチェックしたらホーンの配線が1本断線していた。(左赤矢印)念のためホーンも外し(右)動作確認後断線したコードを繋ぎ直し完治した。
ミッション系の点検とオイル交換 ミッション周辺のオイル漏れはまったくなく問題なし。ついでにミッションオイルを交換した。前回交換より13700kmで交換となる。ミッションオイルはモービルの80W90で3.8L注入した。左の画像は縦になってしまってるが、赤矢印の注入ポンプの先端を注入口に挿入してオイルを入れる。
ブレーキ系の点検(パッドの厚み) 前後のブレーキパッドの厚みを点検した。納車時から29800km走行の値である。まだかなりの厚みがあるが右Rのパッドが6.0〜7.0mmとやや少ない。これはショップの記録によると納車時にブレーキ鳴りのためにパッド研磨したからだそうだ。ローターは許容値の限界に近いので次回バッドの交換と同時にローターも交換することにした。サーキット走行をされる方はもっと減りが早いであろう。
(mm) 左(外/内) 右(外/内) 新品
Fパッド 7.7/7.7 8.0/8.0 11/11
Rパッド 8.0/8.0 6.0/7.0 11/11
サイドブレーキ点検 サイドブレーキはRのキャリパーとローターを外して点検。特に問題はなくエアーブローでクリーニングした。911の場合サイドブレーキの効きがあまりよくないので必ず点検してサイドの引きしろを調整した方が良い。
サスペンション点検 フロントとリアサスペンションのボルト、ナット類にガタがないか徹底的にチェックして増し締めしていく。(画像)ショック関係は昨年リフレッシュしておりショックアブゾーバーのオイル漏れも問題なくOK。現在リフレッシュ後10400km走行。
エンジンエアークリーナー点検
 
エンジンのエアークリーナーの汚れを点検した。画像左が13000km使用したクリーナー。メカニックさんの判断でもう少し使えそうなのでエアーブローしてもらいました。右画像がエアーブロー後のクリーナーで少しきれいになった。エアークリーナーの汚れは都市部と地方ではかなり汚染の程度が変わってくるので頻繁に点検した方が良い。
デスビキャップ&ローター&コード点検  
キャップセンターの電極が電気腐食している ローターの電極点検
デスビ/コイル間のセンターコード センターコードのキャップの根元も電気腐食している
点火系の重要部品であるツイン・ディストリビューターの点検をしたが、デスビキャップのセンター電極が白く電気腐食(左上画像)していたのでサンドペーパーできれいに腐食を落とした。デスビとコイル間のセンターコードのキャップ根元(右下画像)も腐食しておりセンターコード(左下画像)を2本交換した。センター以外のキャップ電極は全部検査した結果問題なかった。ローターの電極とキャップ内部の電極の焼けは問題ない。(右上画像)このキャップとローターは前回交換から20300km使用しているがまだ新しい。おそらく今回の腐食はセンターコード側からの侵食と思われる。デスビからスパークプラグまでのコード12本は次回クラッチのOHとかでエンジンを降ろす機会にすべて交換した方が良いかもしれない。
エンジンハーネス点検 993で現在問題になっているエンジンハーネスの腐食をチェックした。ハーネスの被服をすべて切り裂くわけにはいかないので見える範囲でしかチェックできないが、触れてみた感触では銅線の被服もまだ弾力があり腐食しているようには思えない。したがってハーネスはこのまま使用することにした。今後も積極的にチェックしなければならない重要項目ではある。少しでも被服が硬化してひび割れしておれば即交換した方が良いであろう。尚、96年以降のバリオラムエンジンのハーネスはエンジンを降ろさないと交換できないらしいので大事である。
エンジン&エアコンVベルト点検 エンジンVベルトは20300km、エアコン用は16700km使用しているが張り具合もOK。ベルト鳴きや表面劣化もなくこのまま使用する。矢印のベルト切れ感知用のローラーはいずれ消耗して音が鳴り出すのでそうなれば交換が必要となる。
電動冷却ファン・レジスターの点検 電動冷却ファン・レジスターの点検をしたが問題なし。夏場にエンジン温度が上昇した時にエンジンをOFFした後も電動ファンが内部を強制冷却するようになっているが、画像のレジスターが壊れるとファンが正常に動作しなくなる。これもオイルクーラーのレジスターと同様にチェックが必要である。
アイドルスタビライザーの点検
エンジンルーム上部(画面上)にあるアイドルスタビライザーの内部を点検したところカーボンが付着(左下画像)しているのでクリーニングした。右下画像はクリーニングされた内部。きれいになっているのがわかるだろうか。
バッテリー点検 バッテリーのキャップを外し液量と比重をチェックしたが問題なし。当面はこのバッテリーを使用することにした。このバッテリーは新品時から3年間使用しているが911としてはよく長持ちしてる方だそうだ。3年過ぎるとこまめにチェックしないとバッテリーが突然死してからでは遅いので交換時期の見極めが必要。
*エアコンマイクロフィルター点検 エアコンのマイクロフィルターは汚れているので左右2個とも交換した。前回交換してから16500km使用したエアコンのマイクロフィルターは真っ黒になっていた。画像中央が汚れたフィルターで左右が新品のフィルターである。花粉症の方には必需品ではないかと思う。
ヘッドライト点検 ウインカー、ヘッドライト関係の点灯をチェックしたが問題なし。993の場合はヘッドライトがレバー一つで外せるのでヘッドライトのガラスカバー内側をきれいにクリーニングした。画像左がクリーニング前で右が後である。右側の方が輝いているのが判るだろうか。
新Rタイヤのバランス調整とタイヤ空気圧点検 Rタイヤを新品にするためタイヤショップでタイヤとホイールの組み込みとバランスをとってもらった。Fタイヤは交換しないが左右ローテーションするために組替えとバランス取りを実施した。もちろん空気圧もチェックだ。タイヤを車両に組み込む時にはボルトとナットが焼きつかないようにポルシェ専用のグリスを塗布。いざ焼きつくと外すのがたいへんなのだそうだ。
エアコンガスの点検 エアコンのガスが抜けてないか点検したがまったく問題なかった。すでに7年になるエアコンであるがまだまだ元気一杯である。ガスが抜けはじめるのはいつ頃か?
テスト走行 一通りの点検整備が終了し、路上で30分ほどメカニックさんが入念にテスト走行した。まったく問題はなくメカニックさんも太鼓判を押してくれました。ここまでの工程で7時間におよぶ整備である。今まで納車されてからずっと同じメカニックさんにお世話になっておりMY993のコンディションを熟知していただいてることの安心感は何物にもかえられないのである。7時間も整備に付き合っていただき本当に感謝してます。