エンジンオイル

エンジンオイルについて
エンジンオイルは秋から春は10W40のオイルを使用し夏季は外気温が上昇するので、10W50から20W50を使用しています。交換時期は3000kmから4000kmで年間3回は交換しています。99年の秋からはドイツDEA社のポルシェ認証品VISCOBIL SL (10W40)を入れています。このオイルは水素分解ベース(部分合成油)ですが米国API規格SJとヨーロッパACEA規格A3/B3に合格しており、価格もリーズナブルです。 ポルシェマガジン18号の「ポルシェにお勧めオイル」特集にも紹介されています。定価は¥5400/4Lですがカーショップで¥3980/4Lで入手しています。このオイルは持続力があり2500〜3000km走行後も滑らかなフィーリングが感じられ3000kmで割り切って交換するのであればお勧めです。高級志向のユーザーにはVISCOBIL S1 定価¥9400/4Lも販売されています。(私は使用したことはありません。)
夏季はお世話になっているポルシェショップ推薦のオイルを使用しています。今年の夏からはカストロールのRS(10W50)を使ってみたいと思っていますが、できるだけ多くの銘柄のオイルをためしてみて、エンジンフィールの違いを試してみたいと考えています。このホームページを見られた方でコストパフォーマンスの高いポルシェお勧めオイルがあればメールで教えていただきたくお願いします。世の中には高価なオイルが沢山ありますが、サーキット走行など過激な走りをしないユーザーにとってはできるだけコストも低く抑えたいものです。(993の場合は約8.5L必要) オイルフィルターは毎回オイル交換で交換する時もありますが、最近は2回に一回交換しています。993の場合はフィルーターは2個付いており同時に交換します。車をリフトアップしてリアタイヤ/アンダーカバー/その他を外して交換するため、ちょっと素人には交換は難しいのでショップにお任せしています。993の場合のオイル消費量は10W40のオイルで3000km走行する間に約1200ccほど補給しました。前回乗っていた964カレラ4の場合はたしか1000kmごとに800〜1000ccほど補給していたのでこれと比較すると、993の場合かなり消費量も抑えられています。


DEA VISCOBIL SL TOURING (10W40) /秋〜春  CASTROL RS(10W50)/夏orALLシーズン

          

ポルシェのエンジンオイル交換時期について
オイル交換の時期についてはオイルメーカーや自動車メーカーの思惑もあり、諸説色々ありますが、最終的にはユーザー自信で決めざるを得ないでしょう。私の94年993ではオイル交換のメーカー指定はたしか2万kmですが、実際のところ2万kmで交換となると5年〜15年後のエンジンのコンディションが心配になってきます。まず2万kmまで交換せずとも当面はエンジンが壊れることはないと思いますが、エンジンコンディションの劣化進行は確実に速くなると思います。私のように爺さんになるまで993に乗ってやろうと思うのであれば、オイル管理については特に気になるところです。特にたまにしか乗らない車は油膜が切れた状態でドライスタートをするため、カムの虫食いなどが起きやすいようです。こうなるとエンジンOHしか再生の道はないようです。専門家によると、出来るだけ、こまめに車に乗って走った方が車の健康維持には良いようで、少なくとも1週間に1回は30分以上走行を推奨されています。エンジンだけをたまにかけるのは車全体の健康を考えると効果はないようです。やはり実際に走らせて、きっちり高回転までエンジンを回してオイルを活発に循環させミッションやサスペンションも同時に動かすことが必要のようです。考え方は人間の健康維持とほとんど同じと言えそうです。話をオイルに戻しますが、私の場合はオイル交換は3000〜4000kmと割り切っています。年間に1万km走るので3回/年ペースとなります。オイルの銘柄はどこでもいいのですが、できるだけSJ規格を選んでいます。(価格的に半合成油か部分合成油の選択がほとんど。)さらにポルシェ認証が取れていればベストと考えています。実際にこれらのオイルで4000km近くまで走り込んできますと、エンジンの回転に微妙ですがガサツキが感じられるのが、体感できるので100%化学合成高級オイルを使用した場合でもMax5000km迄が自分の限度ではないかと決めています。オイルの価格についてはディスカウントされた額で¥1000/リットルを基準に選択しています。¥1000/リットルでは100%化学合成油はほとんど買えませんが、たまにバーゲンプライスで販売されていることもあるので要チェックしています。100%化学合成油は高価格だからといって部分合成油などに対して2倍も長持ちはしないみたいで、性能の良い高級オイルほど不純物やスラッジに対する清浄効果が高くなり、安いオイルよりも汚れやすいと考えるべきと思います。ポルシェの場合オイル消費が多いので補充オイルは使用している銘柄か別メーカーの同グレード品を使用しています。グレードが下がる物は全体の特性が落ちるらしいので避けています。尚、私の場合はオイルに別売りのオイル強化添加剤 等はいっさい使用していません。これもあくまでもユーザー自身が決めることであり、これで気持ちよくエンジンが回り、納得できればユーザーの自由だと思います。私が添加剤を使わない理由は添加剤を使用している時は良くても5年〜15年後にエンジン内部がどうなっているかは、誰も判らないからです。少なくてもエンジンオイルには長年の実績があり、強化添加剤が存在しない時代の旧車が現代でも現役で走っているからです。エンジンオイルメーカー認定の添加剤でも発売されれば使用するかもしれませんが、まず有り得ないと思います。このHPを見られた方で、オイル管理について御意見があればTOPのメールでお願いします。「メール紹介」で公開させてさせていただきます。


エンジンオイル基礎知識(専門誌オートメカニックNo.330より)

993の場合はタペットが油圧調整式になり、964や930で行っていたタペット調整が不要になったが、調整機構が複雑になった分オイル管理には神経を使っています。空冷ポルシェの場合このオイル管理が命といっても過言ではないと思っています。ですからオイルについの知識がある程度あっても、オイルの奥深い重要性までは、なかなか知らないのが実情です。このページではオイルの基礎知識を紹介していますが、自分の勉強のためにあえて掲載しました。内容はできるだけ定期的に更新していきます。
T.エンジンオイルの役割

@良好な始動性
エンジンの始動性はバッテリーやエンジンの状態のみならず、オイルの良好な流動性も関係する。エンジンが正常に始動し、回転を続けるには一定の回転数以上に達することが必要である。もし、オイルの粘度が高すぎると、これが抵抗となって、エンジンは最低最低必要回転数以上に達せず、始動できない。つまりオイルの始動性は始動時の温度におけるオイル粘度とエンジン始動のための最低必要回転によって決まる。この時の粘度はエンジンをクラッキングする時の抵抗であり、クラッキング粘度として表示されるものだ。また、どんなオイルでも低温時には粘度が高くなる。しかし始動したら、ただちに流れ始め、連続してベアリングや運動部分に供給されないと、エンジンは破損する。そこで、エンジンのオイルポンプがオイルを圧送できる最低温度が、5Wオイルならマイナス35℃というようにSAE粘度分布で規定されている。この分類が寒冷時のオイル選びの目安になる。
A潤滑と減磨
エンジンが始動すると、動作部分が金属接触を起こさないように、オイルが送り込まれ、磨耗や破損を防ぐ。オイルにはエンジンが始動時には低粘度であることが望ましく、高温になった運転時には高粘度であることが望ましい。これは潤滑上、また耐磨耗性の上から、低温度には油膜ができるのが早く、高温時には強力な油膜が必要となるからである。
B防錆 防触
燃料は完全燃焼すると二酸化炭素と水が発生する。しかしガソリンにしても軽油にしても完全燃焼は難しく、不完全燃焼でススやカーボンを発生させる。これらは黒煙として排出されるが、一部はピストンリングの隙間からクランクケースへ洩れ、オイルを劣化させる。また燃焼で発生した水は、蒸気としてマフラーから排出されるが一部はシリンダー壁にに凝結し、クランクケースへ掻き落される。この水分は錆の原因となる。その他、燃焼によって硫酸、塩酸、硝酸などの酸化物が発生し、部品を腐食させる原因となるが、オイルに添加した添加物でこれらの酸を中和することで防錆、防触をする。
C摩擦抵抗の減少
金属部分の間を油膜で潤滑を行う場合、オイル粘度が高ければ摩擦抵抗は大きくなり、オーバーロード、燃費増につながる。また温度も上昇しオイル自体の酸化劣化も早まる。このような場合、添加剤の使用で摩擦抵抗を減らすことが出来る。
Dエンジン内部と部品の清浄
燃焼時に発生する凝縮水、吸入空気中の塵埃、オイルの酸化劣化物、燃料の不完全燃焼などから発生するスラッジは低温運転中に発生しやすい。スラッジの構成物質は最初きわめて小さな粒子でオイルフィルターを通過してしまう。またエンジン可動部分の隙間に入り込む油膜の厚さよりも小さく、そのため部品の潤滑面を損傷させることはない。しかし、これらの粒子は互いに接触、成長して大きな粒子となってオイルの流れを阻害し始める。添加剤の入っていない鉱物油にはこれらの汚染物質を処理する能力はないが、現在市販されている高性能オイルには清浄分散剤が添加されており、エンジン部品を清浄にし、スラッジの堆積を防ぐ性能を持っている。
E燃焼室内堆積物の減少
ピストンのトップリングとシリンダーを潤滑したオイルはそのままシリンダー壁に残り、燃焼ガスに曝されて、燃焼する。最新の高性能オイルは燃焼してもカーボンなどの堆積物はほとんど残さない。清浄分散剤を含んだオイルはリング溝を清浄の保つので、シリンダー壁へのオイル供給量も最小限にでき(オイル上がりが少ない)オイル消費量を減少させ、シリンダーのカーボン堆積物を減少させられる。
F冷却作用
エンジンの冷却というと、冷却システムが一手に引き受けていると思われ勝ちだが、エンジン発生熱の60%を冷却しているに過ぎない。エンジン内部のカムシャフト、メタル、ピストン、タイミングギアなどはオイルによって直接冷却されている。一般的に燃焼室温度は約1100〜1700℃、バルブは540〜1100℃、ピストンは540℃位に達する。この熱はコンロッドを経て、メタルに伝わる。メタルに使用されている錫や鉛は敏感で177℃で軟化する。運転中のクランクケース油温は90℃以上、135℃に達することもある。オイルはこの温度でメタルに供給され、120〜150℃に上昇してクランクケースに戻ることでメタルを損傷しないよう保つ。このためには連続的に大量にオイルを供給するしかない。オイルの冷却作用を助ける添加物という物は存在しないのだ。なお、冷却効果は低粘度オイルほど大きい。
G密封作用
ピストンリング、リング溝、シリンダー壁の表面は顕微鏡的に見ると凸凹しており密着していない。そのため高圧の混合気や燃焼ガスなどは圧縮洩れを起こそうとする。これを0.025mmの薄い油膜で防いでいるのが、密封作用。古いエンジンなどではこの働きが低下するが、高粘度オイルを使用すれば、ある程度、回復が見込める。

U.エンジンオイルの成分と種類

オイルとは二つの固体表面間の摩擦を減少させるというような物理的および化学的性質を持つ物質の総称である。ここで言うオイルとは自動車用エンジンオイルのことでありベースオイル(基油)と添加剤を調合して作られる。オイルの品質を向上するには、ベースオイルの品質向上、新しい添加剤の開発と混合組み合わせ、その増量などによって行われる。ベースオイルと添加剤の調合混合については特定の手順や技術を必要とする。その上でAPIなどで規定された品質基準とSAE粘度に合格または適合することが必要となる。
@鉱物油
原油の蒸留から溶剤処理、水素化処理、脱ロウなどの複雑な精製工程を経て得られる。いくらかの不純物を含む、ストレートミネラルと呼ばれる。
A化学合成油
潤滑にもっともすぐれた分子を化学的に合成したもの。自動車用としてはエチレンが合成されたPAO(ポリ アルファーオレフィン)が最も多く使用される。PAOはほとんど無色透明。
B部分合成油
鉱物油基油に化学合成油を混合させ、性能を向上させて品質を向上させたもの。混合比は30%程度まで。パートシンセティックと呼ばれる。
C半合成油
準合成油(セミシンセティック)とも呼ばれるが定義はない。鉱物油を水素化処理または分解し、化学合成油に近い性能の基油をそのように呼んでいる会社もある。

V.エンジンオイルに加える添加剤
エンジンオイルに加えられる添加剤の目的は次の3つである。*オイルが本来もっていない性質や性能を加える。(例:清浄分散剤)*オイルが本来持っている性質をさらに助長して高める。(例:粘度指数向上剤)*オイルの成分の中に、もともと存在していた望ましい物質が高度精製過程で失われることがある。その失われた性能を回復し、さらに効果を高める。(例:酸化防止剤)
@酸化防止剤
オイルが高温で使用中に酸素と反応し、スラッジ、ワニス、酸性の腐食物質を作り、寿命が短くなるのを防ぐ。
A粘度指数向上剤
オイルの低温粘度と高温粘度との差を小さくする。
B流動点降下剤
低温でワックスが析出するのを防ぎ、低温始動性を改善する。
C清浄分散剤
エンジン内部に発生するスラッジやワニス、混入するカーボンなどを溶解し、オイル中に分散懸垂させる。
D油性向上剤
潤滑部の金属表面に付着し、境界潤滑の時に油膜が破壊されないような高い付着力を加える。
E腐食防止剤
エンジン内部の金属腐食を防ぐ。
Fサビ止め剤
鉄または鋼表面の腐食を防止する。
G発泡防止剤
オイル中に空気が抱き込まれて発生する泡を消す働きをする


W.エンジンオイルの規格とは何か?

どんなオイルを使用するのか?という時、基準になるのが規格である。エンジンの設計者、オイルの製造メーカー、車の使用者に共通で使える規格があれば、オイルを選ぶ時や使用油の指定をする時に便利である。そのような理由で粘度と品質の規格が決められている。
@粘度---SAE粘度規格
最も新しいSAE粘度分類は1995年SAE・J300に定められている。この規格では0Wから60まで、下表のように規定されている。この規格では低温時のエンジン始動時のクラッキングの行われ易さと、低温時のポンピング特性(オイルパン内の流動性)が推定できるようになっている。たとえば10W油ではポンピング粘度の欄から-30℃でもオイルの流動性が十分に確保できることがわかる。この数値は95年に改正され、それ以来、この規格に従って製造される低温粘度が、かなり低下し、始動性が向上した。一方、過酷化するエンジンの運転条件に対応し、高温高せん断粘度(HTHS)が規定されている。HTHS粘度はエンジンのベアリングなどの潤滑条件を再現するもので、主としてベアリングの焼付性などを判断することができる。この数値が2.6を下回ると、高温時のベアリングの焼付きが発生すると考えられる。

SAE分類 低温側粘度規定 高温側粘度規定
CCS粘度(cP) ポンピング粘度(cP) 動粘度cSt(100℃) HTHS粘度(cP)
0W 3200at-30℃ 3000at-35℃ 3.8- -
5W 3500at-25℃ 3000at-30℃ 3.8- -
10W 3500at-20℃ 3000at-25℃ 4.1- -
15W 3500at-15℃ 3000at-20℃ 5.6- -
20W 4500at-10℃ 3000at-15℃ 5.6- -
25W 6000at-5℃ 3000at-10℃ 9.3- -
20 - - 5.6<9.3 2.6
30 - - 9.3<12.5 2.9
40 - - 12.5<16.3 2.9(A)
40 - - 12.5<16.3 3.7(B)
50 - - 16.3<21.9 3.7
60 - - 21.9<21.6 3.7

A品質---API規格
最も広く使用されている品質規格がAPI品質規格である。現在ではガソリンエンジン油として、
SG、SH、SJ規格油が、ディーゼルエンジン油としてはCD、CE、CF-4、CF油が販売されている。ガソリンエンジン油のSG規格までは過酷化するエンジンの潤滑上の要求に対応するために新規格が開発された。それに対して、SH以降は環境対策油というのが特徴である。ディーゼルエンジン油についてもCF-4は高速の4サイクル用自然吸気及びターボ用オイル、CFはオフロードの予燃焼室ディーゼル用で使用燃料中の硫黄分が0.5%を越えるような場合を考えた規格になっている。(CG−4規格もあるが、このオイルは特定のエンジンで動弁系に不具合が発生することがあるので日本の自動車メーカーは、使用することを嫌っている。従って国内では入手できない。)
BILSAC---GF-2
日米の自動車工業会が定めた規格でAPI SJに認証されたもので燃費節約性能試験に合格すればGF−2と表示できる。マークの形からスターバーストマークとも呼ばれる。車の取り扱い説明書にも記載されている。
CACEA(ヨーロッパ自動車工業会)
ACEAは輸入ヨーロッパ車の取り扱い説明書に記載されている。多くの場合APIと併記されているがヨーロッパ車のエンジンを使用したテストと室内試験が多いことが特徴である。
DSJ規格に次にくるのは?
SJ/GF−2の次の規格の発効は少し遅れて2000年中に準備が終わり、2001年から運用が開始される予定。初規格はAPI・SL/GF−3となる。SJの次にSKが使用されないのは韓国にSKという石油会社があり、商品名と規格名が同一で混乱するからと言う理由による。SHの次にSIが使われなかったのは数字のTと間違うからと言う理由であった。
E次期SL/GF−3規格の要求性能
APISL/GF−3オイルは「環境対応型エンジンに使用するオイル」と考えられ、その主な内容は
*省燃費性能(特にGF−3)、低燃費と低摩擦性能の持続。
*排ガス対策装置への適応性向上、低蒸発性と触媒被毒の抑制(リン分添加量の制限)
*オイル交換期間の延長、酸化安定性の向上、低オイル消費性、高温デポジット生成防止性能の向上。
これらのためには、ベースオイルは低粘度、高粘度指数、高酸化安定度のものが必要であり、化学合成油、部分合成油、高度水素化精基油などが増加する。省燃費性を向上させるために、0W−XX、5W−20油が増加し、5W−30が主流となり、10W−30が減少を始める。また低摩擦のためモリブデンを配合した低フリクション油の開発が予測される。

D.エンジンオイルの選び方

@ヨーロッパでの場合
欧州ではDIYによる交換が多いが、修理工場(ガレージ)とカーディラーを選ぶ人も、作業の信頼性を理由に増加している。ブランド志向が強く、メジャー石油会社のオイルが良く選ばれる。欧州は国境が地続きであり、道路によって隣の国に行けるため、隣の国の石油会社のオイルも、日本における「輸入ブランド」と言う意識はなく使用されている。欧州全体が緯度が高く、外気温が低い期間が長いので、始動性のよい化学合成油の比率は高い。その一方でアウトバーンを始めとする高速走行が多いこともあり、10W40、15W40などの高粘度オイルの使用が多い。自動車メーカーも高粘度油を推奨する傾向にある。なお、ヨーロッパでは、独占禁止法の関係でメーカー純正オイルというものは無い。
Aアメリカでの場合
アメリカではDIYによるオイル交換比率が非常に高い。しかしオイル交換専門店における交換が増加しつつある。その理由は作業料金の安さと廃油処理が個人では出来にくくなった環境対策の問題が大きい。修理工場での交換は従来から多いが、車の故障率が減ったことでカーディラーでの交換は減っている。多くのガソリンスタンドがセルフサービスでガソリンを販売するようになり、その結果としてオイル交換能力を失った。カーショップではオイルを販売していても作業設備をもたない店があったり、貸ピットになっている場合が多い。アメリカでのオイルのブランドは猛烈に多い。オイルメーカーの数であるがメジャーと呼ばれる大手石油会社、独立系石油会社、オイル専業会社、製造だけを行い販売は行わないブレンダーとそこから仕入れ、自社ブランドを付して販売する無数の配給会社などがあり、その数は数知れない。こららのブランドの総数は千に近い。その中から販売店はお客様の志向、利益、メーカーの技術力、品質などから取り扱いブランドを決定することになる。広大なアメリカでは、物流コストとアフターサービス、宣伝効果などの問題で全国規模での販売は難しい。日本でどこに行っても見つかるオイルがアメリカでは、ごく一部の地域と店でしか販売されていないのが普通である。品揃えは平均して2〜3ブランド。オイル専門店では通常オイルタンクからの計り売りを行っているから1ブランド、修理工場でも2〜3ブランドと言うのが実情である。従ってユーザーはオイルを選択するブランドの幅が非常に狭い。しかし日本と違い自動車メーカーと石油会社の協力で、販売されているオイルはほとんどがSJ/GF−2となっている。
B実際のオイル選びはどうするか?
実際のオイルを選ぶ基準としては「車の取り扱い説明書」による方法と「使用条件に従う方法/粘度」がある。「車の取り扱い説明書」による方法ではメンテナンスデーターのページに指定するエンジンオイルの項目があるので指定グレードを確認してオイルを選ぶ。「使用条件に従う方法/粘度」は高速走行、煩雑な発進停止、長距離走行、短距離走行の繰り返し、高負荷などの使用条件などを考え、適切な粘度を選ぶ。そのほか始動性、省燃費性、ウォームアップ性、耐磨耗性なども粘度が影響する。「ベースオイル」については、性能がすぐれているのは、化学合成油、水素化精製油、部分合成油、鉱物油の順になる。化学合成油だからと言って出力が大きくなったりするわけではないが、、始動性、加速性、エンジンレスポンス、エンジン寿命に大きく影響する。エンジン信頼性も高くなるので、できるだけ高性能のベースオイルを使用したオイルを使用したい。

Y.エンジンオイル Q&A

@APIマークやILSACのマークが付いていないオイルは駄目か?
これらのマークが付いていれば、安心して使用できるオイルということになるが、こうした認証を得るには膨大な金額(数千万円)が必要となるため、オイルの性能は規格水準に達していても、マークが付いていないオイルもある。この場合、サービスグレードでいえばAPI・SJではなくSJとのみ印され、API・SJ相当であることを示す。こうしたマークが付いていないオイルにも高性能オイルはあるのだが、いわば自称であるために、どのオイルが本当に高性能なのか確認ができない。その意味で、やはりマークが付いているオイルが安心して使える。
AAPI・SH以上の指定にSG以下は使えない?
指定より低いグレードのオイルを使うと、使ってすぐに異常となることはないが、使っているうちに異常が起きたり、十分に性能を発揮できなくなる恐れはある。特にターボやDOHCなどの高温になりやすいエンジンでは、エンジンの異常摩擦、高温腐食、潤滑不良といったトラブルが発生しやすくなる。したがって、その車に相応しい性能を発揮するためには、指定グレードのオイルを使った方が良い。
Bグレードの違うオイルを混ぜてはだめか?
たとえばAPI・SJとSGグレードのオイルが余った場合、両者をカクテルして使ってもなんら問題はない。但し、品質や性能は向上することはなく、低いグレード側へ寄ってしまう。例えばSJとSGを同量混合してもSHクラスとはならず、SGプラス程度のグレードと考えられる。一方、ベースオイルが、鉱物油のオイルと化学合成油を混合した場合はどうなるかと言うと、化学合成油は、高粘度とするための添加剤や、異なったベースオイルの混合などにも相性がよく、まったく問題は起きることはない。ただし、やはり性能が良くなることはない。
C純正オイル以外は使わない方がいいのだろうか?
オイルは車メーカーから出ている純正品に限ると言われた時代があった。市販されているオイルの中には粗悪品もあり、それならメーカーが品質を保証している純正オイルが安心というわけだ。しかし、これは一般ユーザーのオイルに関する知識や情報が乏しかった時代のことで、現代では、色々な情報がさまざまなメディアから得られる時代。そして極端に粗悪なオイルというものもなくなっており、純正オイルでなくては・・・
という時代ではない。純正オイルといっても、車メーカーがオイルを製造しているわけではなく、一定の規定を満たしたオイルを石油会社が供給しているもの。純正以外でもグレードや粘度が適正なら、純正と変わりないといえる。尚、すでに「ヨーロッパの場合」で述べたが、車の先進国欧州では、独占禁止法の関係でメーカー純正オイルというものは無いのである。
D化学合成油と鉱物油とはどう違う?
一般のオイルの原料は原油である。各種の炭化水素の化合物だ。この混合物である原油を沸点の差を利用して分けることを蒸留といい、蒸留によってなるべく近い炭素鎖長の混合物に分け、さらに不純物を抽出したり、改質して取り出されたものが、鉱物油になる。エンジンオイルはこの鉱物油をベースオイルとして、各種の添加物を調合したものだ。一方、化学合成油というのは原油から精製されたエチレン等から、化学的に分子の配列を組替えて合成したものだ。例えて言えば、プラスチック製品と同様の化学製品なのだ。したがって、鉱物油では絶対に対応できないような使用条件にも耐えるように分子構造を設計して、複雑なプロセスを経て製造されるので、当然、性能の優れた製品ができる。ベースオイルとして優れている他に添加剤との相性も良い。良いことずくめの化学合成油だが、問題になるのが価格だ。鉱物油に比べると数倍というレベルになってしまうのだ。尚、鉱物油に化学合成油をブレンドした部分合成油もある。また最近注目されているのが、ハイドロクラッキング油というのがあり、これは鉱物油に対して水素精製処理をしたもので化学合成油に匹敵する性能を持っているとされ、価格も抑えられている。
Eオイルが足りないとどうなるか?多過ぎるとどうなるか?
エンジンオイルは少なすぎても多すぎてもエンジンに悪影響を与えることになる。まずエンジンオイルが少ない場合は、オイルの休憩時間が不足することで劣化が早くなる。サクション量不足が生じる場合がある。サクション量不足は、坂道や横Gがかかった場合に起こり易く、この結果、オイル切れを起こし、トラブルにつながりかねない。一方オイルが多い場合には、クランクシャフトがオイルを、かき回してフリクションロスが増え、燃費悪化やパワーダウンにつながる。量が非常に多いとオイル上がりを起こし、燃焼室内で燃焼ガスと混合して燃え、カーボン発生につながったり、ピストンリングの機能を低下させる。いずれにしてもオイルが多すぎても、少な過ぎてもエンジンにとっては良くない。だからオイル交換時には、キチンとレベルをチェツクして適性なオイル量を保つようにしておくことが大切。
Fオイルは買いだめしておいても劣化しないか?
オイルは酸化劣化するものだが、それは強い熱にさらされた場合の話で、常温で密封した状態であれば、5年や10年で劣化することはない。冷暗所で密封した高品質オイルが20年以上変質しなかったという例もある。だから、品質の劣化という点では、それほど心配することはない。しかし、保存している間に、エンジンも進歩すれば、それにつれてオイルの品質も向上する。いざ使うという時になって、使えるエンジンがないのでは意味がない。ドラム缶でのまとめ買いは、やめておいたほうがよいだろう。
G化学合成油や高性能オイルは交換時期を長くできるか?
化学合成油は鉱物油に比べて、熱安定性に優れているため、化学合成油をベースオイルとしたエンジンオイルは、酸化による劣化スピードが確実に遅くなり、エンジンオイルとしての使用限界は長くなる。だが、使用中にオイルに混入したススやホコリ、未燃焼ガソリン、水分などの成分による汚れは、ベースオイルが化学合成油でも鉱物油でも同じになる。つまりエンジンオイルはその使用方法によって汚れ方が違うのであり、ベースオイルの違いで交換時期が延びることはない。
Hエンジンフラッシングはやったほうがいいのか?
エンジン内部のクリーニングとしてフラッシングを勧めるショップもあるが、基本的にはやらなくてもいいし、やっても効果があるとは思えない。オイル交換をさぼったせいで発生したスラッジは、強力にこびり付いており、エンジンを分解してブラシでこすっても落ちないほどだから、フラッシングで簡単に落ちない。911の場合はオイル交換してもオイルライン等に2〜3Lほど古いオイルが残ってしまうので、オイルとしての特性が低いフラッシングオイルを入れるのは、絶対にやめたほうが良い。

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