伝統の空冷フラット・シックスに心酔する

( 元PORSCHE正規ディラー M自動車 97年広報資料より )

ポルシェの歴史----それは技術革新の歴史でもある。その技術的な革新は、時流に左右されない独自の哲学によってもたらされたものだ。世界規模で行われるモータースポーツへの参戦も、ポルシェ・フィロソフィーのひとつの表れである。 過酷なレースやラリーに果敢にチャレンジすることによって得られた貴重な技術的蓄積。それが今日のポルシェ・スポーツカーに相並ぶもののない高性能と高品質、優れた耐久性を具現化し、さらなる革新へとまい進させるのである。ポルシェ伝統の軽合金製空冷水平対向6気筒エンジンも、その哲学と技術革新の所産である。

ヴァイスアッハの知的頭脳集団のほとばしる英知と情熱を注ぎ込まれた、この伝統的ボクサーシックスを搭載した 993型911カレラを走らせてみると、そのクオリティの高さはさらに現実的すぎるほど鮮明な鼓動となって、五体はおろか脳髄にまで染みわたり、操るものをとことん心酔させるのである。空冷フラット・シックスはあくまで柔順であり、完璧なまでに直接的に反応する。それ自体に魔力が潜むかのように、ドライバーの意志に忠実に従属し、レッドゾーンまでとてつもない俊敏性をみせて吹き上がるのだ。この空冷式パワーユニットの淀みのない回転上昇感はまさに芸術であり、右足のキックダウンは全身に張り巡らされた神経繊維を活性化させ、体内のあらゆる血管を膨張させる。

音響効果も当然ながらダイナミックかつ個性的だ。“ヴァイスアッハ管弦楽団”によって念入りにチューニングされた空冷サウンドは、ドライバーと隣のゲストを官能の世界へと誘う。ボクサーシックスが奏でる高品位なミュージックは、低回転域でこそやや控えめであるもの、その野太い低周波サウンドは空冷水平対向6気筒のパワー・ポテンシャルを推し量るに十分な迫力を放ち、スロットルに力が加えられてクランクシャフトの回転数が4000rpmに達するや否や、ひときわ官能的な“クラシック・サウンド”を鳴り響かせる。
いわゆるポルシェ・クラシックとして好まれる911固有の空冷サウンドを奏でる“オーケストラ”を指揮することは、世のスポーツカー・ファンの見果てぬユメなのである。


どうですか?この短い文章には空冷ポルシェの魅力がぎっしりと詰まっていると思いませんか?今でもこの文を読むたびに作者の熱い想いが伝わってきます。作者自ら空冷ポルシェのハンドルを握り、魅力を知り尽くした傑作文と思います。他にも素晴らしいコラム 等があればTOPのメールで紹介下さい。  

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